コンテスト結果発表
祭り街道文学大賞 選評
総評
審査委員長:小林謙三阿南町長
前歴のない文学賞、それも長野の小さな名も知れぬ町を題材にすることで当初は多少の不安もあったが、終わってみれば北は北海道から南は沖縄まで多くの反響と質量共に予想を遥かに上回るご応募を頂いたことに驚きと感謝を隠しきれない。
入賞候補作品もミステリー、恋愛文学、歴史小説などバラエティに富み、さまざまな観点から当地が描かれているのには感動を覚えた。またはるばる当地を取材に訪れた応募者と、地域住民との暖かいふれあいのエピソードを耳にするにつけ大変に喜ばしく、この試みの新たな側面を発見することも出来た。
今後は第2回祭り街道文学大賞を目指し、取り組んでいきたい。
祭り街道文学大賞プロデューサー
新風舎 小山和彦
一次審査から最終審査まで250作品すべての原稿に目を通し「皆さん良くぞここまで書いてくれた」と感動しています。ガイドブック製作の取材などを通し現地に幾度となく足を運び、「阿南マニア」を自他共に認める私でさえ作品を通して新たな発見がいくつもあり取材力の深さに感嘆のため息を漏らしました。
今回の文学賞が遠く離れた人と人を結び付け、珠玉の作品の数々を生み出すこととができたことに深い意義を感じています。
プロデューサーとして「地元の人しか書けなんじゃないか」という不安も見事に裏切られ、アマチュアだからこそ持ちえる魂のヴァイブレーションを感じ、次回開催は自分の命題であると心新たに決意しました
選評
大賞 『女人囃子がきこえる』 南 ふう
阿南町の日常や、生活の問題が自然に描けている。介護や家屋の老朽化などで都会に出て行った子供の元に身を寄せるためやむなく阿南の地を離れるなど、地域住民の抱える問題を同じ目線に立って描こうとするところに共感が持てた。
作品の完成度は他の応募作をはるかに凌駕し、住民とのきめ細やかなやり取りや、丹念な取材のあとが見受けられ、大賞にふさわしい作品である。
何より遠く沖縄に住み、当地とは縁もゆかりもなかった受賞者がこれだけ阿南の地を理解してくれたことに驚きを隠せない。(小林謙三)
小説として非常に完成度が高く、主人公が魅力的に描かれていて読者を作品の中へ引き込んで離さないことに成功している。作品には包容力が有り、且つ説教臭くないところに好感が持てた。
また、過疎などの現実問題がクローズアップされていて、非常にリアリティがある。結果として主人公は上京することになるのだが、そこには故郷への愛情が有り、故郷が彼女を成長させたのだというメッセージを強く感じた。
ふるさとと都会との対比、距離感などがサブリミナルなテーマとしてうまく描かれていて、彼女はいつかまた、この故郷に帰ってくるのだろうという印象をもった。(松崎義行)
(略)
2003年11月
(掲載ページ http://www.shinpusha.co.jp/event/contest/maturi_souhyo.html) |
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